本記事では、フェルミ推定の基礎から攻略法までを実際の例題を交えながら解説していきます。
まずはじめに、本記事を執筆する筆者の自己紹介をさせていただきます。
筆者は東京都内の企業でITコンサルタントをしており、日々論理的思考力が求められる環境下で仕事をしています。
また、就活生の頃は高学歴層の学生が所属する就活コミュニティに属しており、数多くのフェルミ推定の問題を解いてきました。そんな中でフェルミ推定の問題を数多く解くことが、自身の論理的思考力向上につながると考え、社会人になった今でもフェルミ推定の問題を解くことに取り組んでいます。
そんな筆者が、フェルミ推定の基礎や解き方などのノウハウを解説していきます。
はじめに
フェルミ推定という言葉を初めて聞く人もいるかもしれません。
実際にフェルミ推定は、新卒の採用面接でももちろんですが、企業で働く中でも社内の評価面談の中でその場でフェルミ推定を課されるようなこともあったりします。(コンサルタントとして働いているため、日々思考力を磨き、自分に足りない能力を認識・インプットする目的で実施されています。)
また、中途採用の面接においてフェルミ推定の質問を投げることで求職者の思考力を判断していると人事をしている友人も話しており、新卒就活や中途採用においてフェルミ推定が求められる場面が多々あるなと感じています。
特に、外資系のコンサルティングファームなど採用面接の中で、フェルミ推定の考え方を活用したケース面接などが実施されているという話はよく聞く話だと思います。
今回は、そんなフェルミ推定について解説していきます。
フェルミ推定の基本を学ぶのであれば、以下の本をお勧めしますが、もう読んだという人も多いと思いますので、そんな人のためにも例題も用意していますので、ぜひトライしてみて下さい。
まだ読んだことが無いという人は、マストで読んでみましょう!
フェルミ推定とは
フェルミ推定とは、一見すると予想できない数値を、自分が持っている知識と論理的思考力を頼りに解を導き出すことを指します。
・日本にピアスは何個あるか?
・日本に電柱は何本あるか?
フェルミ推定の事をよく知らない人は、この問題を見た時に「そんなの分かる訳ない」となると思います。
ですが、これらの問題は自分が持っている知識と論理的思考力を頼りに算出することができます。
例えば1問目の「日本にピアスは何個あるか?」というお題に対して、以下のように考えます。
<前提>
日本にあるピアスの数は、個人で持っている所有物と、法人が店舗で販売していたり在庫として抱えているような商品の2パターン存在している。
<計算式>
仮に個人の所有物に絞って計算した場合、以下の計算方法で算出できる。
日本にあるピアスの数=日本の人口×ピアスの所有率×ピアスの平均所有数
この計算式で算出するにあたり、ピアスの所有率に関しては、性別や年代によって大きく変化しそうという仮説が立てられるので、日本の人口を年齢と性別でセグメントを切って出します。
(割愛するが、日本の人口が1.2億人なので、世代と性別ごとの人口比率を算出する)
そこからは、20代女性は60%くらいの人がピアスを持っていて、平均所有数は3個くらいだよね、、、といった形で自分なりの仮説をもとに算出していきます。
この算出方法で、本当に正しい数値が出せるのかと疑問に思う人もいるかもしれません。
しかし、フェルミ推定ではリアルの数値と回答が近いかではなく、正しい算出ロジックに基づいて算出されているかや論理的思考力が問われるため、20代女性のピアスの平均所有率と言われても分からないという人も、ここの具体の数値に関してはあまり気にすることではないかなと思います。
このようなフェルミ推定は、物事を因数分解して構造的にとらえる力を身に着けることができるので、面接対策だけでなく、思考力を向上させ、日々の仕事のパフォーマンスを最大化させる上でも非常に役に立ちます。
なので、面接でフェルミ推定を使用しないという人であっても勉強しておいて損はないかなと思います。
フェルミ推定で見られているポイント
ここまでフェルミ推定とはどういったものかについて解説してきました。。
ここからは企業がフェルミ推定を通して、どのようなポイントを見ているかについて解説します。
論理的思考力
まずは論理的思考力です。
物事を構造的に捉え、論理的に解を導き出すことができているかを見られています。
物事を構造的に捉えるためには、抽象と具体を行き来しながら物事の全体像を捉えたり、要素を切り分け適切な課題を分解したりする必要があります。
また、フェルミ推定で導き出した解答を、相手にわかりやすく伝えるためには、話を論理的に、簡潔に説明する必要があります。
自分が持っている情報量と面接官が持っている情報量が異なるため、フェルミ推定を行う上で定めた前提条件や、立てた仮説、どう全体像を捉えどのように要素分解したのかなどを論理的に説明する必要があります。
多面的思考力・クリティカルシンキング
論理的思考力だけではなく、多面的思考力やクリティカルシンキング(批判的思考)も見られているポイントになります。
実際にビジネスの場でも、コンサルタントの場合はクライアントから指摘をされたり、新たな視点でFBを頂くような機会も多くあります。
その際に、素直に指摘やFBを受け取り、正しく修正していくという姿勢や、そもそも指摘を受ける前の分析段階で「他に別のアプローチは考えられるか?」や「この指摘間違っていないか?」といった多面的思考力・クリティカルシンキング(批判的思考)が非常に重要になります。
ケース面接において、フェルミ推定を解き終えた後に「他に違った切り口での回答を検討したりしましたか?」という質問をされることがありますが、これは自分の回答の筋が悪いのではなく、多面的思考力を見られているケースが多いです。
なので慌てずに、別の切り口だとこういう切り口でも考えられると思いましたといった受け答えができれば問題ないと思います。(もちろんすぐに返答できるようになるためには、ある程度フェルミ推定の問題を解いてなれることが重要です)
改めてにはなりますが、多面的思考力やクリティカルシンキング(批判的思考)が見られているため、自分でフェルミ推定の問題を解く際は、「問題を解くアプローチって本当にこれだけだっけ?」「そもそもこれ間違ってない?」と自問自答してみて下さい。
思考すること自体を楽しめているか?
最後は、思考すること自体を楽しめているかになります。
筆者が初めてフェルミ推定と出会った時、ゼミの教授に「日本に電柱の数は何本あると思う?」と質問されました。
正直、そんなん理解できる訳ないだろと思っていたのですが、フェルミ推定での計算方法を教えてもらった時、めちゃくちゃ興奮したのを覚えています。
初めてフェルミ推定を知った時、筆者と同じように興奮したという人いると思います。
知的好奇心が高く、思考をすることが好きな人はコンサルタントに向いていると思うので、そのあたりの職種との適正を判断する手法としてフェルミ推定は用いられていたりします。
また、職種の適正だけでなく、仕事において思考することが求められる職種は多く、思考することが好きな人の方が、入社後の成長率は高いと思います。
思考をすること自体を楽しめているかというのは非常に重要なポイントになります。
フェルミ推定の基本的な流れ
ここからはフェルミ推定の問題を解いていくにあたって、基本的な流れについて紹介します。
問題によって、どの角度からアプローチするかは変わってきますが、基本的な流れに関しては大きく変わる事は無いので、参考にしてみて下さい。
前提の定義
まずは前提の定義をする必要があります。
例えば「日本にギターは何本あるでしょうか?」という問いがあったとしましょう。
その場合、ギターは個人の所有物なのか、法人の所有物なのか、、、
このあたりを定義して問題に取り組む必要があります。
また、「日本にバンドの数は何組あるか?」という問題があった場合
ひとりのドラマーが複数のバンドに所属しているというケースも考えられるため、前提として、ひとりのアーティストは原則1組に所属しているものとするなどと自分で定義をしたうえで問題に取り組む必要があります。
「ラーメン屋の売上を求めよ」というお題があれば、ラーメン店がどういう客層が多い場所に位置しているのかや、店舗の客席数、平均客単価などを定義する必要があります。
特に、面接やグループディスカッションの場では、異なるバックグラウンドを持った人同士でのコミュニケーションになるため、前提のすり合わせや言葉のすり合わせをしっかりと行っていく必要があります。
そして、前提の定義はどこまでやればいいといった正解がないため、ある程度は割り切りながら、議論の途中で前提を見直すといったことも大事になってきます。
因数分解をする
前提を定義した後は、物事を因数分解して答えを導き出します。
ここは、物事を適切な粒度・階層で切り分けて思考ができているかなど、論理的思考が求められるところであり、フェルミ推定でも重要なポイントとなります。
例えば「とあるサウナの1日の売上は?」というお題があったとします。
この場合、以下のような計算式で出すことができます
サウナの1日の売上=サウナの利用客数×一人当たりの平均単価
また、利用客数は、サウナのキャパや時間帯によって客数が変わってくることから、以下の計算式をもとに算出する必要があります。
サウナの利用客数=サウナのキャパシティ(定員)×サウナの占有率×サウナの回転率×営業時間
※占有率:サウナのキャパシティに対してどれくらい埋まっているか
※回転率:一人当たりの平均滞在時間をもとに算出
このような形でどんどん掘り下げていくことで、最終的な解を導き出します。
数値を当てはめて解を導き出す
先ほどの例で出した「となるサウナの1日の売上」に関して、以下の計算式で算出できると説明しました。
サウナの1日の売上=①サウナの利用客数×②一人当たりの平均単価
①サウナの利用客数=③サウナのキャパシティ(定員)×④サウナの占有率×⑤サウナの回転率×⑥営業時間
サウナのキャパシティや営業時間、平均単価などは前提の定義の部分でどんな「サウナなのかを定義することで大きく変わってくるかと思います。
(一般的なサウナか、貸し切りできるプライベートサウナかなど)
占有率に関しても、平日か祝日か、昼か夜かといった時間帯によって大きく変わってくると思います。
これらの数値を自分なりの仮説をもとに当てはめることで最終的な回答を導き出すことができます。
出した解答に妥当性や現実性があるのかを確認する
実際に回答を出すことができれば、その数値の妥当性や現実性を検証する必要があります。
ただ問題を解いて満足するのではなく、「他に考えられるアプローチはないか?」や「本当にこの解き方で正しいのか?」を振り返ることによって、多面的思考や批判的思考を身に着けることができます。
このあたりは、一人でやるよりも先輩や友人に第三者視点でFBをもらうことで新たな学びを得ることができると思います。
良く出題されるフェルミ推定の例題について解説!
フェルミ推定と言っても、「日本にピアスは何個あるか?」といった世の中にあるものの数を数える問題もあれば、「ラーメン屋の売上を算出せよ」といった売上系の問題など様々です。
そんなフェルミ推定について、「個数系」「売上系」「市場規模系」の3つに分けて紹介していきます。
個数を推定するフェルミ推定の例題・解き方
個数を推定するフェルミ推定の例題を紹介します。
1人当たりの平均所有数や所有率などから算出するやり方や、特定の面積当たりの個数から全体の個数を求めるやり方など、解き方は様々です。
実際に例題を紹介します。
「日本にある自転車の数は?」
前提として、自転車と言っても個人が移動手段として使用する自転車もあれば、競輪選手やトライアスロンの選手が競技で使用する自転車、自転車ショップが商品として抱えている自転車まで様々です。
ここでは、個人が移動手段として使用する自転車に絞ってみましょう。
次に計算式を算出します。
日本にある自転車の数は以下の通り算出できます。
日本にある自転車の数=世帯数×1世帯当たりの自転車保有台数
交通機関が発達している都市部と、そうではない地方部を比較した時に、1世帯当たりの自転車の保有台数に差が生まれてきそうというのは容易に想像できると思います。
世帯数は、日本の人口から1世帯当たりの平均人数を割れば算出できると思います。
日本の人口が1.2億人、1世帯当たりの平均人数を2.5人とした時に、約5,000万世帯となります。
また、今回は都市と地方で分けて計算するため、世帯数も都市と地方で分けて出す必要があります。
全国の世帯数を100%とした時に、都市部の世帯数は60%、地方を40%とします。
(都市の方が一人暮らし世帯が多いという仮説から、60:40で数字を仮置きしています)
この場合、都市部の世帯数は3,000万世帯となり、地方の世帯数は2,000万世帯となります。
次に自転車の保有台数に関してです。
都市部は自転車を持っていないという人もいると思いますので、仮置きで1世帯当たりの自転車の保有台数を0.5台とします。
地方はどうしても自転車を使う機会が多くなるため、仮置きで1世帯当たりの自転車の保有台数を1.5台とします。
最後に数値を代入していきます。
都市部の自転車の数=3,000万世帯×0.5台=1,500万台
地方の自転車の数=2,000万世帯×1.5台=3,000万台
合計で、4,500万台となりました。
売上を推定するフェルミ推定の例題・解き方
次に、売上を推定するフェルミ推定の例題を紹介します。
フェルミ推定の中でも特に、前提の定義が非常に重要な問題になります。
実際に例題を解いていきます。
「ラーメン店の1日あたりの売り上げは?」
ラーメン店の1日の売上を計算するにあたり、店の客層や店の席数、営業時間など、前提をしっかりと定義した上で計算する必要があります。
ここでは、以下の通り前提を定義した上で計算していきます
- 客層:仕事終わりのサラリーマン
- 客席数:20席
- 営業時間:17時∼24時
また、平日か土日によって店の混雑度や注文されるメニューも変わってくると想定されるため、今回のケースでは平日の売上を計算するとします。
まずは計算式を考えます。ラーメン屋の1日の売上は以下の通り考えることができます。
ラーメン屋の売上=営業時間×客席数×占有率×回転率×客単価
占有率というのは、客席数に対してどれくらい席が埋まっているかの指標です。
常に満席とは限らないため、平均して客席数に対してどれくらいの席数が埋まっているかを考えます。
今回は70%で算出してみます。
また、回転率は、1人の顧客がどれくらいで食事を済ませ、1つの席で何回顧客が座ることができるかの指標になります。
例えば、ラーメンを食べるのに20分かかるとすると、1時間当たりの回転数は3回になります。
今回は回転数は3で計算します。
客単価は必ずしも正確である必要はないのですが、客層を仕事終わりのサラリーマンと設定しているので、1,200円くらいが妥当なのではないかと思います。(ラーメンのセットメニューとかでビールがついているものだとそれくらいしそうですね)
それぞれの数値を代入して計算すると、ラーメン店の一日の売上は約35.2万円と産出することができます。
筆者が過去にアルバイトをしていたラーメン店では、1日あたりの売上は25万円前後であることが多かったので、少し数字が大きくなってはいますがかなりいい線いってると思置います。
仕事終わりに客が増えることを想定して、開店時の17時∼19時だけ占有率を下げて計算するなどすると、より確からしい数値に近づくかもしれません。
市場規模を推定するフェルミ推定の例題・解き方
市場規模を推定するフェルミ推定の例題を紹介します。
実際に例題を解いていきます。
「日本の自動車販売の市場規模を求めよ」
日本の自動車販売の市場規模を算出する際、自動車でも新車なのかや中古車なのかによって変わってくると思います。
また、個人所有なのか法人所有かなどによっても変わってくると思いますが、ここでは個人所有の新車に絞って計算していきたいと思います。
新車が一年間で売れる金額を市場規模とした場合、以下の計算式で算出することが可能になります。
自動車(新車)の市場規模=日本の自動車保有世帯数×車の所有率×自動車買い替え率×自動車の平均単価
日本の自動車保有世帯数に関しては、少し前に例題として取り上げた「日本にある自転車の数は?」のお題と考え方は同じになります。
日本の人口を1.2億人とし、平均世帯人数が2.5人とした場合、日本の世帯数は約5,000万世帯になります。
都市部の方が地方よりも一人暮らし世帯が多かったり、そもそも人口が多いことから、世帯数も都市部の方が多いと考えられます。
なのでここでは、日本の世帯数の内、60%を都市部、40%を地方とし世帯数を計算します。
実際に計算すると、都市部の世帯数は3,000万世帯となり、地方の世帯数は2,000万世帯になります。
車の所有率は都市と地方で変わってくると思います。
地方の方が交通機関が発展していないため、自動車の保有率が高いと考えます。
ここでは、都市部の自動車保有率を15%、地方の自動車保有率を50%で計算します。
次に自動車の買い替え率を計算します。
買い替え率は、自動車の平均使用年数を算出できれば算出できます。
自動車の平均使用年数に関して、人によってはコロコロ車を変える人もいれば、1台の車を10年以上乗っているという人もいると思います。
ここでは、平均使用年数を5年で算出したいと思います。
5年に1回買い替えるとなると、5世帯に1世帯は買い替えることになるので、買い替え率は20%になると思います。
自動車の平均単価は、100万円で計算します。
これまでの数値を代入すると日本の自動車販売の市場規模は2.9兆円となります。
ちなみに以下の記事では、日本の自動車業界の市場規模は63兆円となっており、かなり乖離してしまった結果となりました。
しかし、新車の販売台数は約445万台となっており、今回の計算で算出した新車の汎愛台数(市場規模から車の単価で割った数)が290万となっているため、新車の販売台数だけで見るとかなりいい線いっていると思います。
フェルミ推定の例題一覧
実際に解き方の流れについて理解をした後は、実際に問題を解いてみることが重要なので、ぜひ以下の記事を参考にしてみて下さい。
(随時更新していきます)
まとめ
ここまで、フェルミ推定の解き方や、見られているポイントについて解説してきました。
フェルミ推定は問題を解けば解くほど、自分の思考力が磨かれるため、論理的思考力を磨きたいという人にとっては物凄くいいトレーニングになります。
また、問題を解いた後に他の人に壁打ちすることで、自分に無かった視点や不足している観点を学ぶことができるので、フェルミ推定を思考力のトレーニングとして行う際は、友人や先輩にプレゼン形式で発表しあうなど、やり方を工夫してやってみるとよりいいと思います。
このメディアでも随時、フェルミ推定の練習問題をアップしていきたいと思っているので、そちらも参考にしてみて下さい。
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